灰本クリニック

小太りは生き延びるが、痩せは生き延びない

 ここに示す内容は、灰本 元の著書「50歳を過ぎたらダイエットしてはいけない-メタボの嘘と肥満パラドックスの真実-」(文藝春秋社、2023年9月発売、285ページ、1500円)に詳しく解説しているので是非ご一読ください。

 肥満パラドックスとは小太りが生き延び、痩せは短命なことで、みなさんの常識とは著しく異なりますが、癌・心不全・肺炎など命に直結する病気では肥満パラドックスが正しいのです。一方、メタボリック症候群(メタボ)とは肥満が糖尿病と心筋梗塞の発症に強く関係するからダメという考えです。しかし、痩せていたゆえにこの2つの病気にはかからなかったが、手術できない癌にかかってガリガリに痩せて早く亡くなった人は健康? 太ったゆえに糖尿病や心筋梗塞を抱えながら癌にかかって、術後20kgも体重が減ったが生き延びた人は不健康? なのでしょうか。

 メタボは日本人の死因1~3位の癌、心不全、肺炎をまったく考慮に入れていません。にもかかわらず、小太りや肥満が癌や肺炎でも死なず、あたかも人類全体の健康に貢献するような大嘘が内科系教授、製薬会社、食品会社らから発信され、間違った情報が20年以上もまかり通ってきました。

 まず、人の命と体重の関係を正しく知りましょう。BMIは体格を示す目安で体重kg÷身長m÷身長mで計算します。一般的にBMIが21未満は痩せ、22~24は中肉中背、25~29は小太り、30以上は肥満となっていますが、はたしてそうでしょうか? 

 図1は日本人40歳以上35万人を12.5年追跡してBMIとすべての死因による死亡リスクの関係、そのうち図2はBMIと癌で亡くなった人との関係です。

図1.png図2.png

縦軸は死亡リスクで上に行くほどたくさん亡くなります。横軸はBMIで右に行くほど太り、左に行くほど痩せています。青で囲ったところが男性、赤は女性です。図1、2ともBMI<21の痩せはたくさん亡くなっており、23~29の小太りは死亡リスクが少なくなっています。

 図3は男女を含む日本の心不全患者41万人の入院死亡リスクとBMIの関係です。心不全による死亡リスクはBMIが25~29の小太りでもっとも低く、痩せるほど上がっています。

図3.png
 図4は脳血管障害にかかった人がその後生きているか亡くなったかをBMI別に調べた結果で、BMIが25以上の小太りや肥満の死亡リスクは低く、痩せるほど死亡リスクは高くなっています。

図4.png

このように、すべての死因による死亡、癌、心不全、脳血管障害、肺炎など命が危険に曝される病気では小太りが生き延びて、痩せは亡くなるのです。これを“肥満パラドックス”と言います。

 それでは糖尿病はどうでしょうか?小太りや肥満は血糖が高いのですが、果たして死亡リスクは高いのでしょうか? 図5のグラフは韓国の40歳以上の般住民140万人を9年間追跡してBMIと糖尿病の発症の関係を示しています。メタボが主張するごとくBMIが高いほど直線的に糖尿病発症が増えていきます。

図5.png
ところが、図6は糖尿病の患者90万人を10年間追跡して死亡とBMIの関係を調べた結果です。

図6.png

もっとも死亡リスクが少ないのはBMIの26~30の小太りで、痩せるほど死亡リスクは高くなります。当然、血糖の平均値は太った方はが高く、痩せた人は低くなります。糖尿病の生死は血糖値よりも体重が重要なのです。

 これが肥満パラドックスです。本当の健康とはなにか、一目瞭然ですね。


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