糖質オフやカロリーオフの甘味料を使っている糖尿病の患者さんにとって最も衝撃的な内容かもしれません。実は人工甘味料を摂り続けることで、かえって血糖値を調節する力(耐糖能)が悪化することが分かっています。その原因は腸内細菌叢の撹乱(=善玉菌のバランスをかき乱すこと)です。私たちの腸内には約100兆個もの細菌が共存しており、食べた物の消化や体内の代謝(=栄養を分解してエネルギーを得たり、細胞や組織を作る材料を合成したりする働き)に関わっています。
- 2014年、イスラエルの研究者は人工甘味料を与えたマウスの腸内細菌を別のマウスに移植すると、同じような耐糖能の異常が起きることを報告しました。腸内細菌叢と耐糖能(血糖を調整する力)が密接に関係していることを証明した研究で、大きな注目を集めました。
- 2023年にフランスの研究者が1万人を9年間追跡した研究では、人工甘味料を全く摂取しない人に比べ、摂取量が多い人では糖尿病の発症が69%も増加することが示されています。

<人工甘味料の摂取量が増えると糖尿病の発症が増える>
(Diabetes Care. 2023 Sep 1;46(9):1681-1690.より抜粋改変)
- 2024年にインドで行われた研究では230人の男性糖尿病患者に対し、砂糖を人工甘味料(スクラロース)に置き換える介入試験を行いました。その結果、12週間後の空腹時血糖値やHbA1c(過去2か月の平均血糖を反映する指標)は全く改善しませんでした。
当院の診療でも、カロリーオフや糖質オフのチューハイ、ジュースを飲み始めてからHbA1cが悪化する患者さんを少なからず経験します。糖尿病の改善を目的として甘味料を使っても意味はありません。砂糖を甘味料に変えるのではなく、甘味そのものを減らす工夫を管理栄養士と相談しましょう。
<出典論文>
- Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota
(人工甘味料は腸内細菌叢を変化させることでグルコース耐性を低下させる)
Jotham Suez, et al. Nature. 2014 Oct 9;514(7521):181-6.
- Artificial Sweeteners and Risk of Type 2 Diabetes in the Prospective NutriNet-Santé Cohort
(人工甘味料と2型糖尿病リスク:NutriNet-Santé前向きコホート研究)
Charlotte Debras, et al. Diabetes Care. 2023 Sep 1;46(9):1681-1690.
- Effect of Replacing Sucrose in Beverages with Nonnutritive Sweetener Sucralose on Cardiometabolic Risk Factors Among Asian Indian Adults with Type 2 Diabetes: A 12-Week Randomized Controlled Trial
(飲料中のショ糖を非栄養性甘味料スクラロースに置換した際の、2型糖尿病を有するアジア系インド人成人における心代謝リスク因子への影響:12週間無作為化比較試験)
Viswanathan Mohan, et al. Diabetes Ther. 2024 Sep;15(9):2061-2077.