灰本クリニック

症例1:手術不能の膵臓癌患者さん、2年半の抗癌剤との闘い

症例1 Aさん、60歳代 女性、手術不能の膵臓癌患者、身長:145㎝ 体重:41.9㎏ BMI:19.9
Aさんは抗癌剤治療後3日間ほぼ絶食状態となり体重は3kg減、3週間後の次の抗癌剤までに体重を戻すことで2.5年も生きることができました。

 201X年、手術ができない進行膵臓癌の診断を受けた直後に糖尿病が悪化し、当院へきました。すぐにインスリン治療を始め、糖尿病の治療は順調に進みました。進行膵臓癌の告知、糖尿病も合併、そのうえ、抗癌剤治療を始める直前の受診だったのでAさんは頭がぐちゃぐちゃになっており、それを整理するのが大変でした。糖尿病と診断されてから食事を常に抑制していたようで、以下の様な食事日記です。

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 日本人の60歳女性の平均摂取量はエネルギー1800cal、炭水化物250g、脂質509g、蛋白質70gですから、Aさんは普段でも日本人の平均よりもかなり少ない摂取量でした。
 基本方針を「糖尿病の治療は10年先の合併症予防を目指すが、膵臓癌はこの1年を生き延びるのが先決」と定め、食事制限を一切排除し好きなものを何でも食べるように勧めました。また、糖質と脂質を一緒に食べて体重の増加を目指し、食事環境の大転換を行いました。

 しかし、抗癌剤を投与した直後3日間は以下のように固形物をまったく食べることができず、1日プリン1個などがやっと。嘔気によって水分もほとんどとれません。1日の摂取カロリーがわずか77Kcal、ほとんど自宅で寝たきりだったので、体重が一気に3㎏以上減ることもありました。

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 Aさんは3週間に一度の抗癌剤治療を行っていました。抗癌剤直後は無理して食べない。4~7日目は可能なら1日3回食べられるものを食べる。1週間経過したころからは普段と変わらず、可能な限り糖質と脂質が同時に摂れるものを摂取し残り2週間で減った体重を戻すことを繰り返しました。
あるとき、「ごはんを作っても残してしまう」と言ったので娘さんと一緒に外食することを勧めました。すると、「外で食べるのは気分が変わってよい」「外食は残すと悪いという気持ちにさせるため、いつもよりたくさん食べられた」と報告があり、外食は気分転換になる上に、メニューに高カロリーのものが多く、太るという目的にうまく合致していることをわたしも学びました。

 食事を大転換したこととインスリン治療の影響もあり、2年以上も体重を維持、増加することに成功し、その結果間断なく抗癌剤治療を受けることができたのです。手術不能の膵臓癌と2年半も戦うことができたのは本当にすばらしいと思います。

 この患者さんの栄養治療を通して、癌とどう闘うか、抗癌剤の副作用とどう闘うかを教えてもらいました。


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