投稿日時:2020年12月09日
皆さんは十分な睡眠をとれていますか。なかなか眠れなくて薬に頼っている人も多いかと思います。ただし睡眠薬の使用は眠りやすくなるのと引き換えにいろいろと問題も抱えています。代表的なのが、依存性とふらつきによる転倒リスクの問題です。高齢になるにつれ足腰の筋力が低下しがちです。そこに睡眠薬を飲むと、夜中トイレに起きた際などに薬によってふらつく転倒リスクがさらに高まることがあります。
睡眠薬は作用の短いものから長いものまで様々ありますが、一般的に作用時間が短く寝つきの悪い患者さんに多く使われるZドラッグがあります。作用が短いので眠気の持ち越しや、ふらつきの副作用が少なく安全性が高いと言われています。
今回紹介する論文では安全性が高いと言われるZドラッグの高齢者における骨折リスクについて調べています。日本ではゾルピデム(商品名:マイスリー)、ゾピクロン(商品名:アモバン)、エスゾピクロン(商品名:ルネスタ)の3種類があります。
論文ではZドラッグを飲んでいる人と飲んでいない人を比較すると、薬を飲んでいる人の骨折リスクが1.6倍に上昇することが確認された。
眠れない人にとって睡眠薬は欠かせないものかもしれませんが、睡眠薬にばかり頼っていると転倒や骨折により寝たきり状態など余計に状況を悪化させることもあります。睡眠薬がないとどうしても眠れないという人は、依存性、転倒リスクの少ない薬でベルソムラ、ロゼレム、ミルタザピンなどの薬もあるので睡眠薬の見直しを一度医師に相談してみてください。
(薬剤師 松岡武徳)
出典:Z-drugs and risk for falls and fractures in older adults—a systematic review and meta-analysis(高齢者におけるZドラッグの転倒と骨折リスク~システマティックレビューとメタ分析)
Nir Treves et al Age and Ageing, Volume 47, Issue 2, March 2018, Pages 201–208