灰本クリニック

抗生剤でアキレス腱断裂? ~稀だが知られていない重大な副作用~

投稿日時:2021年05月11日

 風邪(ウイルス感染)に抗生剤は効かないというのは医師の常識ですが、効かないだけでなく重大な副作用が出てしまうこともあります。

 2019年9月、厚生労働省は日本で多用されているニューキノロン系抗生剤(クラビット、レボフロキサシンなど)の重大な副作用の項目に「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」の追記をするよう改訂指示を出しました。まれな副作用ですが、1回服用しただけでも起きる可能性があり、知らないと対処できませんので警鐘の意味を込めて紹介します。

 2019年のイギリスの論文では、約2.3万人の患者を解析し、ニューキノロン系抗生剤と一般的な抗生剤(オーグメンチン)を服薬した人と比較すると、全ての腱断裂の相対リスクは1.61倍に,アキレス腱の断裂の相対リスクは3.14倍に増加していました。また、年間1万人あたり、全ての腱断裂が推定2.9人、アキレス腱の断裂が推定2.1人程度発症することも分かりました。ニューキノロン系抗生剤を使用してから30日以内の発症が最も多く(2.97倍)、次いで30-60日以内(2.11倍)が多いことも分かりました。

 ニューキノロン系抗菌薬は効果が強く、幅広い感染症に効いてしまうので、残念ながら日本では乱用されています。稀ではありますが、腱断裂という重大な副作用があることを認識し、本当に必要な場合以外は服用しないことが大切です。

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出典:Relative and Absolute Risk of Tendon Rupture with Fluoroquinolone and Concomitant Fluoroquinolone / Corticosteroid Therapy: Population-Based Nested Case-Control Study
フルオロキノロンおよび併用フルオロキノロン/コルチコステロイド療法による腱断裂の相対的および絶対的リスク:集団ベースの枝分かれ症例対照研究
Daniel R Morales, et al. Clin Drug Investig. 2019 Feb;39(2):205-213. doi: 10.1007/s40261-018-0729-y.


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