下腹部痛と言っても左か右か真ん中か、急性か慢性か、下痢や血便を伴うかで疑う病気が大きく違ってきます。
- 急性の間欠的な(痛みが周期的に来る)下腹部痛に血便を伴う
このような症状で右下腹部痛が中心の場合は細菌性大腸炎が多く男女どの年齢でも発症します。中年以降の女性で間欠的に左下腹部が痛くなり、血交じりの下痢のときは虚血性大腸炎を疑います。いずれも腹部エコー検査やCTで診断できます。細菌性大腸炎なら抗生剤治療を、虚血性大腸炎なら点滴治療を行います。
- 急性の持続的な(痛みに波がなくずっと続く)下腹部痛
右の下腹部痛の代表格として急性虫垂炎(もうちょう)があります。急性虫垂炎の初期症状は胃痛や嘔吐ですが、その後、痛みが右下腹部に移動するのが特徴です。急性虫垂炎と似たような病気に大腸憩室炎があります。憩室とは大腸にできる小さな部屋で、ここに細菌がたまって炎症がおきます。2~3日の経過で悪化し持続的な痛みになるのが特徴です。憩室炎も急性虫垂炎も歩くとお腹に響くので患者さんは前屈みになって歩きます。憩室は大腸の右側(上行結腸)や骨盤内(S状結腸)に多く、右下や右側腹部、左下腹部、下腹部が痛む場合もあります。これらの病気は超音波検査やCT検査で診断できます。虫垂炎は外科手術を行い、憩室炎は絶食と抗生剤で治療します。
- そのほかの急性の下腹部痛
下腹部の真ん中の痛みには膀胱や前立腺、子宮・卵巣由来のものもあります。下腹部痛より下の「鼠径部」が痛む病気に鼠径ヘルニアがあります。高齢男性に多く、立位で腹圧をかけると鼠径部が膨隆し、仰向けになると良くなります。痛みを繰り返す場合は外科手術となります。
- 慢性の(長く続く)下腹部痛
最後に慢性の下腹部痛の原因にストレスからくる過敏性腸症候群があります。下痢と便秘を交互に繰り返し、ストレスで悪化します。当院では西洋医学と漢方を併用して治療を行います。ただ、慢性的な症状で体重減少を伴うと癌が隠れているかもしれません。大腸癌や膀胱癌、婦人科癌がないか確認するため、腹部超音波検査や大腸カメラを行います。