灰本クリニック

ゆるやかにローカーボ その1

投稿日時:2017年05月26日

  1. 炭水化物(糖質)を食べると?
  2. ローカーボとは
  3. 糖質を厳しく制限するのはダメ
  4. “ゆるやかなローカーボ”の利点
  5. 個々の目標をはっきりさせる
  6. ローカーボ食とカロリー制限食どちらが血糖を上げる?

1.炭水化物(糖質)を食べると?

 食品中の主な栄養素には糖質(炭水化物)、たんぱく質、脂質の3つがあります。肥満、コレステロール上昇、糖尿病を引き起こすのは脂質と誤解している方が多いのではないでしょうか。この3つの栄養素のうち食後に血糖値を上げ、その結果、血糖値を下げるホルモンのインスリンを分泌させるのは糖質だけです。脂質やたんぱく質をいくら大量に食べても血糖値も上がらずインスリンも分泌しません。このインスリンがくせ者で、体内で脂肪を合成して肥満となり、血液の中性脂肪やコレステロールを悪化させます。

2.ローカーボとは

 ローカーボとは上の3つの栄養素のうち糖質を制限する食事療法です。ロー(Low)は少ない、カーボ(carbo)は糖質を意味しています。制限するのは糖質だけであって、脂質やたんぱく質をまったく制限しません。というのは糖尿病、肥満、高コレステロールなどを引き起こすのは主に糖質だからです。糖質を制限しても脂質やたんぱく質を食べることは自由なので、空腹感が少ないのがこの食事療法の優れたところです。

3.糖質を厳しく制限するのはダメ

 とはいっても糖質を制限しすぎるのはダメです。約40億年の生命進化の歴史をたどると、原始的な生命は太陽の光と水と大気中の二酸化炭素から糖質を合成して(光合成)、その糖質をエネルギー源として植物は花を咲かせ実をつくり、動物は動きそして進化してきました。そして糖質を中心にして細胞もできあがっています。人類もその延長線上にあります。
 制限しすぎると早死にすることを証明したのは、10万人規模で糖質を制限した人と制限しなかった人を5~20年にわたり追跡した海外の多くの研究です。これらの研究は「糖質を厳しく制限すればするほど癌や心筋梗塞で死ぬ人が増えますが、一方ゆるやかに制限した場合には増えない」ことをわたしたちに教えてくれました。“ゆるやかに制限”するのが健康のコツです。

4.“ゆるやかなローカーボ”の利点

 血糖値が上がらないこと、体重が減ること、血液の中性脂肪やコレステロール値が改善することの3つが利点です。“ゆるやかなローカーボ”を毎日の生活に取り入れることによって、ライフスタイルが変わるだけでなく健康についていろいろな課題を深く考えるようになります。

5.個々の目標をはっきりさせる

 灰本クリニックの調査で1日の日本人の糖質摂取量は150g~600gまで個人差がたいへん大きいことがわかりました。また、抱えている課題も体重、血糖、コレステロールなど個人によって異なります。ですから、なんのためにローカーボをするのかについて個人の目標をはっきり定め、個別におよその糖質制限量を決めるのが安全で効果的に続けるためのコツです。

6.ローカーボ食とカロリー制限食どちらが血糖を上げる?

 2009年に私たちが調査した、ローカーボ食とカロリー制限食の食後の血糖値とインスリン値の変化が海外の専門誌に掲載されました。
 簡単に紹介すると、31人の糖尿病患者さんの協力をえて500Kcalの①ローカーボ食(糖質:脂質:タンパク質=9:42:23g)と②カロリー制限食(糖質:脂質:タンパク質=73:12:23g)を2週間の間隔をあけて早朝に食べてもらい、それぞれの食後の血糖値とインスリン値の変化を調べました(下図)。

500kcal_meals1.jpg

血糖値を上げたのは②カロリー制限食だけで①ローカーボ食では食後の血糖値はほとんど上昇しませんでした(下グラフ)。

low-carbo_high-carbo_endurance_test3.jpg

●はローカーボ食(糖質量は9gと少なく、脂質は42gで大量)を食べた後、□は一般的なカロリー制限食(糖質は73gと多いが、脂質は12gで少ない)を食べた後の血糖値とインスリン値の変化です。ローカーボ食ではほとんど上がりませんが、ハイカーボ食では急激に上昇しています。この研究から血糖値とインスリン値を上げるのは糖質だけで、脂質やタンパク質を食べても上がらないということがよくわかります。


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