日本人の高齢者における中年期および高齢期での血圧と認知症との関連性:久山町研究

記載者:NS  公開日時:2020年01月07日

Midlife and Late-Life Blood Pressure and Dementia in Japanese Elderly: The Hisayama Study
Toshiharu Ninomiya et al. Hypertension. 2011;58:22-28. DOI: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.110.163055

【要約】
 血圧と認知症との関連性は未だ確定していない。我々は総計668人の認知症を発症していない65-79歳の日本の地域住民に対して17年間の追跡を行い、Coxハザードモデルを用いて高齢期および中年期における高血圧と血管性認知症およびアルツハイマー病との関連性を調査した。

 追跡期間中に76人が血管性認知症を発症し、123人がアルツハイマー病を発症した。年齢および性別を調整した後の血管性認知症の発症率は高齢期での血圧値が上昇するにつれて有意に増加し、正常血圧(<120mmHg)で2.3、高血圧予備軍(120-139mmHg)で8.4、stage 1 高血圧(140-159mmHg)で12.6、stage 2高血圧(≧160)で18.9/1000人年(P<0.001)であったのに対してアルツハイマー病の発症率(P=0.88)にはそのような関連性は見られなかった。潜在的な交絡因子を調整すると、正常血圧と比較してそれぞれ高血圧予備軍では3倍、stage 1 高血圧では4.5倍、stage 2 高血圧では5.6倍血管性認知症のリスクが高かった。さらに中年期での血圧値と血管認知症の発症リスクとは正の相関が認められたが、アルツハイマー病の発症リスクとは相関がなかった。中年期および高齢期の両方で高血圧のない人と比較すると、高齢期での血圧値に関わらず中年期の高血圧は血管性認知症の発症リスクが5倍高かった。

 この研究結果は日本の地域住民において、中年期および高齢期での高血圧は高齢期におけるアルツハイマー病ではなく、血管認知症発症に対する有意なリスク因子であることを示唆している。特に中年期での高血圧は、高齢期での血圧値に関わらず血管認知症の発症リスクと大きく関連する。

【読後感想】
 高血圧は脳血管障害や様々な循環器疾患のリスク因子であることは周知の事実であるが、認知症のリスク因子となり得るかについては甚だ懐疑的であった。しかしこの久山町研究よって血管認知症と大きく関連し、また高血圧レベルによるリスクの上昇が明らかにされた。血管認知症が脳血管障害によってもたらされる疾患であることを鑑みるとこの結果の正当性を受け入れることができる。この研究ではアルツハイマー病と高血圧との関連性は認められなかったが、アルツハイマー病患者では脳血管障害や脳微小血管病の合併が多く報告されており、高血圧との関連性も示唆されている。今後の更なる研究結果に注目したい。

(薬剤師 北澤雄一)

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