安定剤や睡眠薬(ベンゾジアゼピン系薬剤)と認知症

記載者:NS  公開日時:2016年10月20日

 “睡眠薬(安定剤)を飲んでいると認知症になる”
皆さんはこのフレーズを耳にしたことがありますか?

 実際に安定剤や睡眠薬を服用している人も、そうでない人もおそらく一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。いつごろからそのように言われてきたのかは定かではありませんが、それは睡眠薬の副作用が認知症の症状に似ているからではないかと言われています。睡眠薬の副作用として一時的な記憶障害が起こることがありますが、おそらくこれを認知症と結びつけてしまい、都市伝説として拡散されてしまったのでしょう。では実際はどうなのでしょうか?

 2014年にアルツハイマー型認知症とベンゾジアゼピン系薬剤(主な安定剤や睡眠薬の種類の名称)との関連性を調査した論文が発表されました。この研究はカナダのケベック州に住む67歳以上の高齢者を対象とした症例対照研究で、少なくとも6年間の追跡期間中にアルツハイマー型認知症と診断された1796名と地域住民から無作為に選んだ7184名について、過去5年間でベンゾジアゼピン系薬剤の服用があったかどうか調査されました。その結果、ベンゾジアゼピン系薬剤を服用していた人は服用していない人と比べてアルツハイマー型認知症の発症が1.5倍多かったのです。また薬剤の服用期間や作用持続時間についても検討され、服用期間が長いほど、作用持続時間が長い薬剤ほどアルツハイマー型認知症の発症との強い関連性が認められました。

 認知症は皆さんの関心が非常に高い病気のひとつです。今回ご紹介した研究結果を見ると安定剤や睡眠薬の服用は必要最低限にとどめておいた方が良さそうです。厚生労働省は今年の10月から新たに2種類の薬剤(エチゾラム〈商品名:デパス〉、ゾピクロン〈商品名:アモバン〉)を法改正により向精神薬に指定しました。その結果、今後は処方日数が30日の制限を受けることになります。これは乱用や依存の恐れがあるという理由での制限ですが、認知症の発症を予防するという観点からも重要なことかも知れません。したがって正当な理由もなく、なんとなく服用しているという人はこの機会に本当に自分に必要なのか、また2種類以上服用している人はまずは1種類に減らせないか検討してみてはいかがでしょうか?最近はベンゾジアゼピン系でない依存性の低い新しい睡眠薬も登場してきていますのでそういった薬剤に切り替えるのもひとつの方法だと思います。一度診察時に医師に相談してみてください。

参考文献
『Benzodiazepine use and risk of Alzheimer’s disease: case-control study』
Sophie Billioti et al. BMJ2014

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