日本の地域住民におけるBMIと脳卒中の発症

Body mass index and stroke incidence in Japanese community residents: The Jichi Medical School (JMS) Cohort Study 
Nami Kawate et al. Journal of Epidemiology 27 (2017) 325e330

【背景】
 欧米諸国では高BMIは心血管イベントに対するリスク因子として報告されてきたのに対して、日本を含むアジア諸国では低BMIは心血管死に対するリスク因子として報告されてきた。日本では脳卒中は死亡や身体障害の主な要因であるにも関わらず、日本におけるBMIと脳卒中の発症との関連性を調査したコホート研究はほとんど存在しない。この研究は、日本の地域住民から得た前向きデータを用いてBMIと脳卒中の発症との関連性を調査することを目的とした。

【方法】
 JMSコホート研究における12490人の参加者から得られたデータが解析された。参加者は5つのBMI群
(≦18.5、18.6-21.9、22.0-24.9、25.0-29.9、≧30.0kg/m2)に分類された。多変量補正ハザード比(HRs)および95%信頼区間(Cis)はCox比例ハザードモデルを用いて算出された。BMI22.0-24.9kg/m2の群を対照群とした。

【結果】
 平均追跡期間である10.8年の間に、395人の参加者(男性:207人、女性188人)が脳卒中を発症し、そのうち249件が脳梗塞であり、92件が脳出血であった。男性ではBMI≦18.5kg/m2(HR 2.11; 95%CI, 1.17-3.82)、女性ではBMI≧30.0 kg/m2(HR 2.25; 95%CI, 1.17-3.82)で全脳卒中のリスクが有意に高かった。BMI≦18.5kg/m2の男性で脳梗塞のリスクが有意に高かった。(HR 2.15; 95%CI, 1.07-4.33)

【結論】
 このコホート研究の母集団で観察されたBMIと脳卒中の発症との関連性は以前に報告されたものとは異なっており、男性では低BMIが全脳卒中および脳梗塞に対するリスク因子であるのに対し、女性では高BMIが全脳卒中に対するリスク因子であった。

【読後感想】
 このJMSコホート研究ではBMIと脳卒中の発症との関連性に焦点を当てているが、脳卒中と高血圧との関連性もまたこれまでの研究で明らかにされている。では高血圧とBMIではどうかと考えてみると、若年者においては高BMIが高血圧のリスク因子として大きく影響を及ぼすと想定されるが、高齢者においては高BMIのみがリスク因子になるとは考えにくく、実際に低BMIの高血圧患者も多く存在する。おそらく今回のコホート研究における結果は、年齢や血圧といった交絡因子で調整すると有意差のインパクトが減少することが考えられる。そのため、より本質を反映した関連性を探るためには今後更に大規模なコホート研究が必要とされる。

(薬剤師 北澤雄一)

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