ローカーボと血液のコレステロール その2

記載者:NS  公開日時:2017年12月25日

NPO法人日本ローカーボ食研究会代表理事
灰本クリニック 灰本 元

1.食事療法は悪玉(LDL)や善玉(HDL)コレステロールを改善するか?

 コレステロールがどのような行程で作られるかはよくわかっており、生化学の教科書には詳しく載っています。したがって、スタチンという悪玉コレステロールを下げる薬が開発されて、世界中の多くの患者さんが内服して人類は心筋梗塞の予防という恩恵をこうむっています。この発明者は日本人で毎年ノーベル医学賞の候補に挙がっています。
 ところが、運動、栄養などが善玉と悪玉コレステロールを作る行程にどのように影響するかはまだ詳しくはわかっていません。悪玉も善玉コレステロールも肝臓で生成されるのであって食物に含まれるコレステロールがそのまま血液中を流れるわけでないので、コレステロールの含有量が多い食品を避けたからといって、血液の悪玉、善玉コレステロールは改善しません。

2.善玉(HDL)コレステロールは運動とローカーボで改善

 スタチンを内服すれば悪玉コレステロールは見事に下がります。それも1日10~20円の費用で200mg/dlの高値から100mg/dl(正常は140以下)まで驚くほど下がります。しかし、スタチンをいくら飲んでも善玉コレステロールは上がりません。善玉は悪玉とちがって高い方が脳心血管障害を予防します。世界中のあらゆる治療法のなかで善玉コレステロールを上げることができるのは、運動とローカーボだけです。
 当院の患者のデータによると、ローカーボを実行すると3-6か月後のHDLコレステロール値は平均で50から55mg/dl前後に上昇します。当院では一つの研究で100人ほどの患者を3―6か月追跡した結果を海外専門誌へ掲載しているのですが、どの研究でもHDLコレステロールは平均3―5mg/dlほど上昇します。

3.ローカーボのLDL(悪玉)コレステロールへの効果

 世界中の多くの研究者によってローカーボが悪玉コレステロールを下げるか上げるかの研究が行われました。その結果、上がるという研究もありますし、下がるという研究もあります。当院の研究では3-6か月後には治療開始前に比べて平均10-15mg/dlも下がりますが、統計的に差がある場合と差がない場合があります。具体的に言うと、ローカーボによって4割の患者は悪玉コレステロールが上がるか変わりませんが、6割の患者では下がります。そして下がる場合は体重低下が同時に起こっているようです。
 アメリカのある研究によると、体重が多い人がローカーボを開始して体重が減ってくるとLDLコレステロールは下がりますが、その後、体重が落ちた状態では逆にカロリー制限食(糖質が多く、脂質が少ない従来の食事)の方がLDLコレステロールをよく下げる。なんとも複雑な結果となりました。

4.LDLコレステロールが高い人へお薦めできる治療は?

 それではLDLコレステロールが高い人はどうしたらよいか。現実的な治療法をまとめてみます。もし、糖尿病の合併や喫煙があるなら、問答無用でスタチンを内服してLDLコレステロール値を90mg/dlまで下げてください。狭心症や心筋梗塞の既往がある方や冠動脈にステントが入っている方は70mg/dlまで下げてください。それによって安い費用で苦労もなく狭心症や心筋梗塞を予防できます。
 一方、そのような病気がなく喫煙もしない方でぽっちゃりした体型(BMI>25)の方ならば、ゆるやかなローカーボによって体重を数kg減らしたとき同時にLDLコレステロールは10~20mg/dl減っている可能性があります。やせた人はローカーボをすべきではありませし、実行してもLDLコレステロールは下がらない可能性が大きいと思います。

5.LDLコレステロール70mg/dl未満を長く続けないように

 悪玉という名前は人為的につけられたのですが、それは心筋梗塞を予防する立場からみると悪玉なのであって、癌を予防する立場から見るとLDLコレステロールは決して悪玉ではありません。LDLコレステロールは細胞膜を作るときに必須の成分ですから、それが不足すると重大な事態、つまり癌化が起こりやすくなります。日本人の大規模な研究では70mg/dl未満の状態が長く続くと癌死が増えると報告されています。
 どんな場合でも中くらい、中庸な状態が間違いなく健康です。極端に高い、極端に低い状態が長く続くと決して健康にはなりません。悪玉コレステロールも70未満に下げすぎないように注意しましょう。

 

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