灰本クリニック

新型コロナウイルスについて(第4回:高血圧の薬との関係)

投稿日時:2020年04月30日

 第4回は新型コロナウイルスと関係する薬についてお話します。一部のネットニュースで報道された血圧の薬と新型コロナウイルスとの関係です。

 新型コロナウイルスはアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を介して細胞内に侵入し増殖すると考えられています。ACE2は血圧に関わる蛋白質であり、世界中で使用されているレニン・アンギオテンシン系の血圧の薬(当院ではオルメサルタン、エナラプリルマレイン酸塩、テラムロAPなど)が、このACE2受容体の体内での発現を増やしてしまいます。ACE2受容体の発現が増えれば、新型コロナウイルスも細胞内に侵入しやすくなるのではないか?というわけです。ただこの説は2002年から2003年に流行したSARSウイルスの際に動物実験で証明されてはいるものの、人間では証明されておらず、新型コロナウイルスにも当てはまるかどうはわかっていません。

 これらの血圧の薬を使用していた方が逆に死亡率が低いのではないか?という報告も中国から出てきています(出典①)。この理由は分かっていませんが、新型コロナウイルス感染症では免疫の暴走により臓器や血管の障害が起きて重症化すると考えられており、血圧の薬が臓器や血管を守っているのではないかと推測されています(出典①②)。

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 レニン・アンギオテンシン系の血圧の薬は高血圧患者さんにとって極めて重要です。国際高血圧学会は「新型コロナウイルス感染症を予防と治療するという観点からこれらの薬の使用を変更すべきという確証はない(直訳)」と声明を出しています(出典③)。血圧の薬を中止すると、脳梗塞や脳出血、心不全など、命に係わる病気の可能性が上がります。自己判断で中止しないようにお願いします。不安でしたら受診時に医師に相談下さい。(文責:灰本耕基)


出典①:Association of Inpatient Use of Angiotensin Converting Enzyme Inhibitors and Angiotensin II Receptor Blockers with Mortality Among Patients With Hypertension Hospitalized With COVID-19
アンギオテンシン変換酵素阻害剤とアンギオテンシンII受容体遮断薬の入院患者の使用とCOVID-19で入院した高血圧患者の死亡率との関連
Zhang P, et al.
Circ Res. 2020 Apr 17. doi: 10.1161/CIRCRESAHA.120.317134. [Epub ahead of print]

出典②:Interactions of coronaviruses with ACE2, angiotensin II, and RAS inhibitors-lessons from available evidence and insights into COVID-19.
コロナウイルスとACE2,アンジオテンシンIIおよびRAS阻害剤との相互作用
Kai H, Kai M.
Hypertens Res. 2020 Apr 27.

出典③:A statement from the International Society of Hypertension on COVID-19
COVID-19に関する国際高血圧学会の声明
https://ish-world.com/news/a/A-statement-from-the-International-Society-of-Hypertension-on-COVID-19/


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