灰本クリニック

メトホルミンは癌発症後の死亡率を改善させる可能性がある

投稿日時:2020年04月20日

 メトホルミン(商品名:メトグルコ)という薬をご存じでしょうか。メトホルミンは肝臓で糖を新たに作り出すこと(=糖新生)を抑制して血糖の上昇を防ぎます。古い薬ですが、副作用が少なく多くの国で使用されています.実はこのメトホルミンには癌の発症を抑制する効果があることが分かってきました。日本の能登らは、メトホルミンを飲んでいる糖尿病患者さんでは癌の死亡リスクが31%減少し、発症も43%減少すると報告しています。また、一部の癌では発症後の余命を伸ばすという報告が相次ぎ、癌治療の分野でも熱い視線が注がれています。今回はその一端を紹介します。

medical_chiken_s.jpg

 2016年の「腫瘍学会誌」に掲載された論文では、早期大腸癌を手術した患者さんにメトホルミンを投与すると癌の再発が37%減り、生存期間が31%伸びると報告されました。また、2018年に「細胞生理生化学」に掲載された論文では、メトホルミンを使用することで膵臓癌の患者さんの死亡リスクが12%改善することが分かりました。特に臨床病期(ステージ)がⅠやⅡの比較的早い段階で見つかった膵臓癌の患者さんで効果が大きく、死亡リスクが26%も低下していました。

 このようにメトホルミンには癌の発症を予防する効果だけでなく、癌発症後の余命を改善させる効果もあることが証明されつつあります。全ての癌ではありませんが、癌治療にメトホルミンを併用することが当たり前の時代が来るかもしれません。(文責:灰本耕基)


出典①:Metformin as an adjuvant treatment for cancer: a systematic review and meta-analysis.
癌の補助療法としてのメトホルミン:系統的レビューとメタ解析
Coyle C, Cafferty FH, Vale C, Langley RE.
Ann Oncol. 2016 Dec;27(12):2184-2195


出典②:Survival Benefit of Metformin Adjuvant Treatment For Pancreatic Cancer Patients: a Systematic Review and Meta-Analysis
膵臓癌患者のためのメトホルミンアジュバント治療の生存の利点:系統的レビューとメタ解析
Wan G, Sun X, Li F, Wang X, Li C, Li H, Yu X, Cao F.
Cell Physiol Biochem. 2018;49(3):837-847


  • 消化器内科
  • 循環器内科
  • 糖尿病内科
  • 呼吸器内科

灰本クリニック

〒486-0838
愛知県春日井市弥生町1丁目80番

(0568)85-0567

受付時間

休診日日曜・祝日/第2土曜/水・土午後

受診のご案内