漢方について

灰本クリニックの漢方治療

1.臨床研究に基づく治療

 灰本クリニックでは、開業以来積極的に治療の中に漢方治療を取り入れてきました。一番の特徴は、今では日本国内で最も長く続いている漢方の研究会「名古屋百合会」を立ち上げ、その研究会の医師や薬剤師と一緒に漢方の臨床疫学というそれまで漢方家が行うことのなかった研究に取り組んできたことです。簡単に説明すると、1)Aという病気にBという漢方薬が使われるが、本当に効果があるのか、2)またどのような条件(症状、日常生活、食生活、体の所見)で、効くのかまたは効かないのか、などについて症例をたくさん集めて統計学的に解析し、誰もが納得できる数字で明らかにしていく研究です。たとえば、下痢が明け方に起こる場合、それ以外の時間帯の下痢と比べると人参湯は何倍くらい効くのかという具合です。そしてその結果を、日々の診療に活用しています。
その一つを紹介してみます。あるとき「雨の前日は王子製紙の煙が名古屋市北区へ流れ、そのときに頭痛の患者が多く来院する」ことに気づいて、それを他の医療機関の先生方と臨床研究を行いました。そして五苓散は雨(曇り)の前日の頭痛に有効(有効率90%!)だが、毎日起きる頭痛や月経前の頭痛には無効(有効率9.5%)、心身症的な頭痛(不安、めまい、立ちくらみ、胸苦しい、息切れ、四肢の冷えを伴う)にも無効ということを発見しました。この結果を知っていれば、頭痛で悩んでいる患者さんを効率よく治療することができます。

2.一味の生薬に注目する

 灰本クリニックの漢方治療でもう一つ特徴的なことは、一味(1種類)の生薬の力に注目しているということです。漢方薬は何種類かの生薬を組み合わせることで一つの処方ができています。それは様々な経験などから導き出された妙技といえますが、実際にどの生薬がどのように効いているかを深く考えながら処方している医師は少数派です。
灰本クリニックでは、独自の臨床研究で発見した一生薬の力を治療に用いています。それは「黄耆(おうぎ)」という生薬の力です。この生薬には、腎不全の患者さんの血清クレアチニンの数値を下げる効果があります。血清クレアチニンは腎臓のろ過機能を表している数値です。この数値が高くなっていくと腎臓の機能が衰えている状態(慢性腎不全)となります。そのまま放置しているといずれ透析治療を受けなくてはなりません。透析治療はとても日常生活を圧迫します。週に3回、1回4時間程度(個人差があります。)の時間がかかります。しかも生涯ずっと。
「黄耆」を服用することで、血清クレアチニンの数値を下げ、透析導入までに数年間の猶予を稼ぐことができます。このような薬は西洋医学にはありません。
まさに生薬の力の結晶ということができます。

3.西洋医学と漢方医学のちがい

 西洋医学は、「器質的疾患」に対して有効といえます。器質的疾患とは、例えば細菌感染症や癌などによって内臓に元に戻らないほどの重大な異常が起こる病態です。CT検査や内視鏡検などにより見つかる重大な病気がこれに該当します。このような病気には外科手術や抗生剤などの西洋医学は非常に有効です。
それに対して漢方医学は、「機能的疾患」に有効です。機能的疾患とは例えば慢性に続く咳や痰、喘息、喉の詰まり、胃腸の症状、頭痛、めまい、顔面のほてり、鼻炎、皮膚症状、慢性前立腺炎、神経痛、更年期障害、月経関連症状などで、いくら検査しても異常が見当たらない病気です。そのような病気に漢方薬はよく効きます。ただし、これらの機能的疾患のうち心理的原因が中心の場合は、西洋医学でも漢方医学でもそれほどは効きません。入り口はこころで出口は体の症状、つまり心身症と言います。心身症ではカウンセリングの方が有効な場合もあります。

4.西洋医学的な病気にも漢方を併用

 狭心症という病気があります。狭心症には、心臓に栄養を送っている血管(冠動脈)の内側にコレステロールなどが沈着し狭くなって起きる「労作時狭心症」と冠動脈がストレスなどで痙攣を起こして一時的に血管が狭くなり起こる「安静時狭心症」があります。労作時狭心症には西洋医学が大変有効ですが、安静時狭心症の場合、西洋医学的な治療を受けても胸の辺りがもやもやとし不快感が続き、今一つすっきりしないと訴える患者さんも数多くいます。そんな時に漢方薬を服用するとすごく良くなるということを経験します。
 西洋医学的な病気でも西洋薬で完全にコントロールできない場合も多く、そのようなときに西洋薬と漢方薬を併用することもしばしばあります。上記の安静時狭心症の他にも、慢性副鼻腔炎、関節リウマチ、帯状疱疹、アレルギー性鼻炎や結膜炎、アトピー性皮膚炎、突発性難聴、気管支喘息、慢性気管支炎、頻脈性不整脈などが該当します。

5.診察室では

 診察では「患者さんの体をよく観察」、「漢方独特の問診票を使って患者さんの訴えを聴き出す」、「脈を触れる」、「お腹の触診する」などを行い、これらの結果を組み合わせて体の状態を全体的に把握します。その病態に対応しておよそ100(よく使う生薬は50種程度)種類の生薬(薬草、草根木皮を乾燥させたもの)の中から約10種類ほどを選択して組み合わせます。ですから同じ病名の患者さんでも処方する内容はそれぞれ異なります。

6.煎じ薬とエキス薬

 漢方薬には「煎じ薬」と「エキス剤」の2つの剤形があります。どちらも健康保険が適応されるので気軽に漢方治療を受けることができます。ただし、煎じ薬とエキス剤ではそれぞれの特徴に違いがあります。
 エキス剤は、漢方薬の利便性を高めるために作られました。煎じ薬を加工して粉末状にしてあるので簡単に服用できますが、欠点も多くあります。いわばエキス剤はインスタントコーヒーのようなもので、決まった処方内容で中に入っている成分の量を変更することもできません。入っている成分量もかなり少なくなっています。お試しで使う分にはよいですが、やはり効果が薄いのが現実です。
その反面、煎じ薬はオーダーメイド治療と呼べる薬で、例えるとこちらは本物のコーヒーといえます。必要な生薬を自在に組み合わせることができ、量の加減も自由自在ですので、やはり効果は強くなります。ただし時間を掛けて煎じなければいけないという欠点や漢方独特の匂いがあるので少々面倒ではあります。しかしそれだけの効果はあるので、重症例や難治性の疾患には適しています。煎じ薬は高度な専門知識が必要となるので、全国的におよそ100人くらいの漢方医しか処方していません。

  エキス剤 煎じ薬
例えると インスタントコーヒー 本物のコーヒー
健康保険 適応 適応、一部自費
生薬の量 変えられない 自在に変更、増量
加減 できない 自在
有効性 薄い 高い
利便性 簡単 面倒
普及度 医師なら誰でも 全国に100人程度

 7.漢方が効くまでの時間は意外に短い

 一般に漢方薬は長期間飲まないと効果が出ないと信じられていますが、これは大変な誤解です。例えば胃潰瘍などの急性期の痛みにも1週間以内に確実な効果が得られますし、ほとんどの慢性疾患でも例外はありますが、だいたい2~4週間以内にはある一定の効果が見られます。ですから、長い間、西洋医学の治療を受けているが一向に改善しないなどお悩みの場合で、漢方をご希望の方は是非試してみてください。

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